ワックス被膜の話③
前回からの引き続きです。ワックスの設計をする時に油汚れをしっかり落としたいので、一般的に耐アルカリ性を高く設計します。
そうすればアルカリ洗剤やアルカリ電解水のダメージを少なくすることができるというコンセプトです。
(UAコーティングはかなりアルカリに強いですが、アルカリ電解水の継続使用で溶けましたので、ほとんどのワックスはそれ以下ですから同様の結果になります)
洗うことに関してはアルカリに強い方が油汚れはよく落ちますね。
しかし日常清掃だと多機能還元水やナノバブル水でも十分なのですよね。
耐薬品性を上げる
結構簡単なやり方ですが、洗ってワックスを塗って完全に乾燥・硬化した被膜にクエン酸や次亜水を塗って回収し、強制的に酸化させます。
被膜も強くなり、耐薬品性も上がります。
他にはワックスでも2液性のコーティングのように硬化剤を入れてそのようにできます。
(これも昔からできますが、うまくいかないことがやる前からわかっているのでやらないのです)
これが自然に起きる状況は、何十年も剥離をしていないワックス被膜です。
ただし良いことばかりではありません。
むしろ良くないことばかりで必ず失敗します。
これも何年もかけて実験したことで、現場で作業しない人にはわからない現象です。
問題なのは、
・耐薬品性が高くて減膜が難しい
洗剤の希釈が濃くなる→リンス製が悪い→密着率の低下、汚れやすい被膜
減膜できないので黒ずんでいく被膜
剥離が困難な状況へ
・コストアップ
洗剤コストがかかりメーカーが儲かるという負のスパイラル
・光沢復元洗浄が困難
洗浄液とワックスの反応が悪くなるので光沢復元幅が出ない。
結果減膜できないのに塗布回数が増え剥離が発生する。
・被膜が脆くなる
柔軟性がなくなるので、しなやかさがなくなり脆くなる。
追従性がなくなるので、椅子の下のように柔軟性が必要な場所は被膜が見えないレベルで割れて黒ずみの原因になる。
そもそもワックスの最大の強みは、剥離ができないコーティングの類と比べて圧倒的な剥離性の良さです。
その強みを捨てて中途半端なものを作っても仕方ありません。
次回に続きます。
2023年06月15日 05:55